この度、スペアナを作り直すことにしました。
前に作ったスペアナの問題点として、
@ 1stLOがフリーランのため侠帯域の測定が出来ない。
A POS−2120Wの出力周波数がリニアでないため周波数の読み取り誤差が大きい。
B 860MHz(2ndLO)のスプリアスがある。
C 1sIFを1GHzとしたため、500MHzと1GHzでフロアレベルが上昇する。
等の問題点がありました。
@ については、PLL化してみます。
A PLL化することによりかなり改善される見込みです。
B 2ndLOを、1140MHzとしてみます。
C 1stIFを1.05GHzにします。(これで550MHzのみ影響を受ける見込みです)
まずは、1stLOのPLL化から始めます。
PLLICには、アナログデバイゼスのAD4118を使います。
ADF4118のレファレンスとして、4.2MHz〜8.2MHzをDDSから入力します。これを1/10して基準信号を420KHz〜820KHzとします。
POS2120の出力は、N分周期で1/2500します。1050MHz÷2500=420KHz、2050MHz÷2500=820KHzとなり1050MHz〜2050MHz
が出力されます。DDSが1Hz変化すると、2500Hz変化することになります。
回路図です。(クリックで拡大します)
(AVRのISP配線は省略しています) |
これを、CD−ROMのケースに入れてみました。中身を全部取って1mmのアルミ板でシャーシを作りました。
このCD−ROMのケースは鉄製のようですし、大きさが同じなので後でケースに入れるとき楽そうです。
(リサイクルショップで105円でした)
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2GHz付近のスペクトルです。 位相雑音は、10KHzオフセットで−91dbc/Hzです。 POS2120のカタログ値はー96dbc/Hzですのでもう少し改善が出来そうです。 |
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1.
05GHz〜2.05GHzまでの出力レベルです。 1.
6GHz付近にディップがありますが今のところ原因不明です。 このままでは、少しレベル不足なので別のデバイスを物色中です。 UPC1677,uPC1678も使ってみましたが1.5GHzから上でゲイン不足で今回の用途には不向きだということが判り使いませんでした。 |
問題点
@ 出力が帯域内で平坦でない。
A 出力レベルがもう少し欲しい。(+15dbm) (@Aを併せて新しいデバイスを検討)
B Loopフィルタの定数の最適化。(これは、次にDDSも含めて全体として検討)
MNA−6
ミニサーキット社のMonolithic AmplifierにMNA−6というICがあります。
0.
5GHz−2.5GHzで+15dbm以上の出力が取れるとあります。
今回、これを入手してみました。 データーシート
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基板に実装したところです。 IC本体は、約3mm角とかなり小さいです。 電源は、2.8V、5Vとありますが5Vにすると実装方法が悪いのか発振が止まりません。無理やり入力を入れると0dbmの入力で+20dbmの出力があります。 そこで電圧を3.3Vに落としてPin7からPin8への33Ωを 100Ωに換えてみたところ発振は止まりました。 その時の周波数特性が下の図です。 |
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入力0dbm 電源 3.3V 80mA 1G−2GHzで+14dbm以上出力がとれました。 周波数特性もほぼフラットでいい感じです。 |
液晶表示部
表示には、SHARPのパッシブカラー液晶モジュールLM32C041(昔秋月に売っていた)をAVRで制御してみようと思います。
AVRはATmega48−20を27MHzのクロックで働かせてみます。(27MHzに深い意味はありません。手持ちの水晶の中で、基本波で一番発振周波数の高いのがこの27MHzの水晶です)
回路図です。(クリックで拡大) (ISP配線は省略しています) 液晶のバックライトには、秋月で売っている冷陰極管+インバータセット のインバータ部分を使っています。(ここらあたりは、前回のスペアナ表示部と一緒です。) |
LM32C041とATmega48との結線表
LM32C041 |
ATmega48 |
|||
PIN No |
記号 |
機能 |
PIN No |
PORT |
1 |
VSYNC |
垂直同期信号 |
18 |
PB4 |
2 |
HSYNC |
水平同期信号 |
19 |
PB5 |
3 |
VSS |
グランド |
|
|
4 |
DCK |
ドットクロック |
15 |
PB1 |
5 |
VSS |
グランド |
|
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6 |
DISP |
DSP OFF信号 |
|
|
7 |
VDD |
ロジック電源(+5V) |
|
|
8 |
VEE |
液晶駆動電源(+30V) |
|
|
9 |
VSS |
グランド |
|
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10 |
R1 |
赤色データ |
14 |
PB0 |
11 |
R2 |
2 |
PD0 |
|
12 |
R3 |
3 |
PD1 |
|
13 |
G1 |
緑色データ |
4 |
PD2 |
14 |
G2 |
5 |
PD3 |
|
15 |
G3 |
6 |
PD4 |
|
16 |
B1 |
青色データ |
11 |
PD5 |
27 |
B2 |
12 |
PD6 |
|
18 |
B3 |
13 |
PD7 |
|
19 |
VR1 |
外付け可変抵抗用 (10KΩ) |
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20 |
VR2 |
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カラーパターンを表示させたところです。 AVRとBasicを使って、液晶に画面表示させることが出来ました。 表示速度が気になりましたが、スペアナ画面表示する分には問題ない 早さだと感じています。 |
これを、次にスペアナの画面表示用に加工します。
LM32C041は、横320ドット、縦240ドットで上の1番目ラインの左から右に320ドット表示し次に2番目ラインを表示し・・240番目ラインの右端で1画面表示が
終わります。
いろいろ考えたのですが、画面を横長で使うのが一番いいのですが、そうするとプログラムが複雑になってAVRをBASCOM(DEMO版)の容量内に収めるのが困難
です。
そこで画面を縦に使うことにします。1stLoの1スイープと1画面表示を同期させ、1ラインごとに入ってきた信号の強さに合わせて線を書かせるとスペアナの表示が
出来るのではという考えです。
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その考え方でプログラムを作って表示させてみました。 DDS − 自作ラダーフィルタ ー A/D変換 ― 液晶表示 DDSは秋月のDDSを使っています。 出力は4.2M〜8.2Mあればいいし出力周波数の設定も簡単なので使います。 (左図は、中心周波数10.695MHz SPAN10KHz) DDSで出力し、液晶に信号を送ります。液晶は1ライン表示して DDSに終了の信号を送ります。この信号を受けてDDSは次の 信号を出力します。これを200ライン分繰り返し終わると最初に 戻ります。 このプログラムでの表示速度は、1スイープ約200ms位です。 せめて100msくらいにはしたいものですが・・ 今後の課題です。 |
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実験風景です。 |
IFフィルタ
RBWを決めるIFフィルタですが、最初はLCフィルタ(〜3M)、セラミックフィルタ(10K〜300K)、クリスタルフィルタ(1K〜3K)で作るつもりでしたが
CQ出版社の「LCフィルタの設計&製作」の中にあるスペアナ用のLCフィルタを実験したところ10K〜1Mくらいまでは作れそうな感じがしてきたので
もう少しつついてみることにします。
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実験回路です。 OPアンプなどとありますが、2SC1815を使ってみました。 |
1段での実験結果です。(エミッタからの正帰還抵抗は0オーム)
入力抵抗 |
3db帯域幅 |
挿入損失 |
特性 |
0オーム |
1.92MHz |
−5db |
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100オーム |
1.56MHz |
−6db |
|
500オーム |
580KHz |
−12db |
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1Kオーム |
440KHz |
−16db |
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1.5Kオーム |
400KHz |
−20db |
|
2.5KHz |
380KHz |
−22db |
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次は、これを2段接続して、挿入損失補填用にTr1石のアンプをつけてみました。
入力抵抗 |
3db帯域幅 |
挿入損失 |
特性 |
100オーム |
620KHz |
−15db (右図はアンプで補正した後) |
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1.5Kオーム |
120KHz |
−23db (同) |
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2段構成でこれくらいの特性が出るのならば、5段くらいにするといけるのではと思えます。
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4段構成にしてみました。 回路中、2SC1815のエミッタに入っている帰還量調整用の抵抗 は、調整がかなりクリチカルで0.5オーム変わっても帯域幅がかなり変化します。 4段作りましたが、定数はみな同じでもこの抵抗値は30オーム前後で微妙に違ってきました。 一応4段で使ってみて、足りないようならもう1段入れることにします。 帯域幅は設計値とは、少し違っていますが微調整するのに適当な抵抗もないのでこのまま使ってみるこにします。 |
RBW |
実測 |
SPAN = 10MHz |
SPAN = 1MHz |
10K |
14K |
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30K |
38k |
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100K |
96k |
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300K |
356k |
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2007年5月26日
ここで、10KHzのRBWで実用になるのか前に作ったスペアナを使って1stLO(PLL化)と、液晶表示装置を使って実験してみました。
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実験風景です。 よく、こんな感じで働くなと自分でも感心してしまいます。 |
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フルスパン RBW=3MHz SweepTime=200ms 350MHz −10dbmの信号を入れたところです。 (自作 V・UHF用SG使用) 使ったSGの第2高調波はー60dbm下なのでノイズに 埋もれています。 右に見えるのは、第2LO(860MHz)のスプリアスです。 |
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左図は、上の信号を SPAN=200KHz SweepTime=500msec RBW=10KHz で見たものです。 リンギングもなく、きれいに見えています。
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この調子だと、RBW=3KHz、1KHzも夢ではないかもしれません。
2007年6月7日
ここには、AD8307を使います。
AD8307のデータシートには、AD603と組み合わせてダイナミックレンジを拡大する方法が記してあります。
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(AD8307 DataSheetより) 603と8307の間にBPFが入れてあります。 これを入れることにより、リニア領域が+10dbmから‐100dbmまで+−1dbの 間に入るようになります。このフィルタが無いと低い方が-80dbmまでしか計測出来なくなります。 ただ、ここに狭いフィルタを入れたのではRBWがそれ以上広く出来ないということになります。 そこでリニア域が狭くなるのは覚悟の上で、ここにRBW=3MHzのフィルタを持って来ることにします。 そのフィルタは、ガウシャン型のBPFを使うことにします。 |
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左図が、ガウシャン型5次のBPFです。 定数は、「LCフィルタの設計と製作」CQ出版社を参考にして導きだしました。 これを、上図のBPFの所に入れます。 インピーダンスは50オームで計算しています。 Cは近い切りのいい数値に変えています。 |
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帯域幅は、約3MHzになりました。 ただ、上の定数は帯域幅4MHzで計算したものです。最初3MHzで計算した定数では2MHzの帯域幅となりました。 原因はよく判りませんがこのまま使うことにします。 |
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久しぶりに、プリント基板をエッチングして作りました。 +10dbm〜−90dbmまでの100dbでほぼリニアの特性が得られました。 |
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こちらは、前に作っていたAD603の変わりにフォワードAGC用の2SC2348を使ったものです。 0dbm〜−90dbmまでは、リニアな特性が出せました。 こちらには、段間のフィルタが入れてありません。 フィルタを入れるとこちらでも100dbのリニア域が実現できそうな感じです。 |
2007年6月13日
3rdLO+MIX
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3rdLOには、132.5MHzの水晶発振ユニットが入手できましたのでこれを使うことにしました。 出力は+10dbmありますので3dbのATTを通してTUF−1に入れます。 MIXの後には、2SC1815のNFBアンプを1段入れてロス分をカバーして全体でほぼゲイン0にする予定ですが、実際は+1.5dbゲインがあります。 後で、2SC1815のNFBアンプの定数を調整してゲイン0にします。 これで少し周波数関係が変わります。 2ndIF=10.7MHz+132.5MHz=143.2Mhz 2ndLOもPLLの分周比の関係で1190.4MHzになりますので1stLOは 1047.2MHz−2047.2MHzまでを使うことになります。 |
0dbm入力時のスプリアス
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0dbm入力時までリニアリティは確保されています。 全体を通して信号レベルは、0dbm以下にしますのでこれでいいことになります。 |
0−500MHz |
0−200MHz |
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−10dbm入力時のスプリアス
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この後にRBWのフィルタが来ますので スプリアスはきれいさっぱり無くなってくれるでしょう。 |
0−500MHz |
0−200MHz |
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2007年6月20日
2ndLO+MIX
構成は、PLLにはTC5081を使います。
最初の分周にはTD6127BPを使って1/128(1190.4MHz÷128=9.3MHz)にしています。
このICの最大周波数は1GHzになっていますが1.2GHzでも使えています。
その後TC9198で1/93(9.3MHz÷93=100KHz)して100KHzを取り出します。
最初はADF4117を使って作っていましたが、ご昇天させてしまい手持ちがなくなったので上記の構成にしました。
ADF4360−6というデバイスも入手していたのですが、実装の目途がたたずにあきらめてごく平凡な構成としました。
1190.4MHzを作り出すVCOは、秋月で売っているMQC309−1016(発振周波数範囲 980MHz〜1050MHz)を使います。
MIXには、ミニサーキットのRMS−2を使っています。RF/LOの周波数範囲は5−1000Mですが問題無く使えています。
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2ndLO用の1190.4MHzのVCOを準備します。 まずは、ケースに止めてあるハンダをはずして中身を取り出します。 左の上部分がLにあたります。 ここにハンダを盛って発振周波数を高くします。 |
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ハンダを盛った様子です。 これ位盛って、発振周波数が1170MHz〜1210MHz位まで可変出来るようになりました。 後、ケースに戻すと発振周波数が変わりますのでコントロール電圧の中心部分で目的周波数になるように調整しました。 これだけハンダを盛るとQが下がるのか出力レベルはかなり下がります。 |
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準備した基盤です。 左側が、VCOとポストアンプ(uPC2710) 右上が、MIX部分になります。 右下が、出力アンプ(uPC1651G)とLPF です。 |
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部品を実装したところです。 |
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PLL制御部です。 |
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入力に1040MHz、0dbmの信号を入力したときの出力です。 |
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VCOの出力スペクトラムです。 100KHzオフセットで、位相雑音は−114.2dbc/Hzです。 |
2007年6月25日
1stLOの改善
1stLOの出力アンプを、MNA−6に替えました。
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基板も新たに作りました。 構成は POS2120 -
uPC2708 - MNA-6の構成です。 2708とMNA−6の間にデバイダを入れて1stLOを 取り出せるようにしました。 (将来TGを作る時の為) MAXHOLD機能を使って出力レベルを測ってみたところ上図のようになりました。 |
帯域内に渡ってほぼ平坦な出力(約+15dbm)を得ることが出来ました。
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最後に、シールドケースを被せて出来上がりです。 |