スペアナの製作
今から5年くらい前になるでしょうか、秋月電子で「スペアナアダプタ」の製作キットが販売されていました。
スペアナの文字にふらふらと購入しましたが結構高価でした。(たしか8,800円)
購入してから1年くらいは放置していましたが、思い立って製作を始めたのがスペアナにどっぷりつかることになりました。
最初は、オリジナル通りに作ってみましたが性能に満足できずにあれこれ改造を始めました。
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初期のころのスペアナアダプタです。 |
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内部の様子です。 |
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この時の、スペアナアダプタと実際のスペアナとの比較です。
まずまず合っていると思います。
ところが、このアダプタにつないで表示させていたTRIOのオシロCO−1504のトランスから突然白煙が上がり御昇天されました。
困ってどうしようかと思っていたところにインターネットでJK1XKP貝原さんのページでデジタルオシロの記事を見つけこれだという
ことで貝原さんの掲示板に書き込みさせてもらいましたところいろいろサポートしていただき一体型のスペアナに進化しました。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~khr3887/
(貝原さんのHPです)
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一体型1号機の様子です。
この時は、3階構造にしたため調整するのが難しく困りました。
そこで今度は、御昇天されたオシロCO―1504のケースを利用することにしました。
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フロントパネルの様子です。 表示が薄くてよく判りませんが100Mhz −5dBmを入力しています。 第2高調波まで見えています。 周波数範囲 1M−1000M RBW 20K,200K,1M スパン 1000M,100M,10M, 1M 最大入力 0dbm ATT −10dB、−20dB |
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300Mhz –5dBm Span 100Mhz/div Rbw=1M |
50Mhz –5dBm Span 100Mhz/div Rbw=1Mhz |
50Mhz –5dBm Span 10Mhz/div Rbw=200K |
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50Mhz –10dbm Span 1Mhz/div Rbw=200k |
50Mhz –10dbm Span 1Mhz/div Rbw=20k |
50Mhz –10dbm Span 100Khz/div Rbw=20k |
表示の様子です。
今回第一Loには、ミニサーキット社のPOS−2120Wを使用しましたが電圧―周波数が直線ではなく表示部の中央付近で目盛りからずれています。
鋸波を直線ではなく少し補正すればいいのでしょうが今後の検討課題です。
又、第2Loの860Mhzが漏れてスプリアスとしてでています。これについては、第2Loを1140Mhzにすることで解決するつもりです。
又、Spanを100Khz/divにすると最後の写真のように第3IFのフィルタのリンギングにより波形が波打ちます。
これについては、第1LoにPLLもかけないただのVCO(POS−2120)を使用しているので対策がありません。
対策があるとすればYIGを使うことでしょうが高価で手がでません。
ただ、このスペアナを作るのにもかなりお金がかかっています。現在ではヤフオクあたりでかなり安価にスペアナが買えますのでそちらのほうがコスト
的にはいいと思いますが、これを作る約3年半の間にいろいろ実験をしたり作ったり壊したりで自作のスキルは上がったと思います。
いい経験になりました。
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全体のブロック図です。 |
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内部を上から見たところです。 撮影用に各BOXの蓋を取っています。 真中上から 860Mhz 2ndLO その下が、140Mhz 2ndIF 10.7Mhz 3rdIF 129Mhz 3rdLO その左がLogAmp AD8307 |
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下から見たところです。 右上がSweep回路 右下がRF 左上がPOS2120Wを使っている1stLO 左下が1GhzのBPF |
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プリント基板を直接真鍮板に半田付けする。 |
各BOXは5mm厚のアルミ板と真鍮板で 作りました SMA端子も直接真鍮板に半田付けしています。 |
各ブロックの説明
AD8307を使っています。
http://www.analog.com/jp/prod/0%2C2877%2CAD8307%2C00.html
データシートは、上記のHPからダウンロードできます。
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出力にバッファをつけて100mV/dBにしています。 (表示上は1目盛10dBになります) 出力のOPAmpはLM358を使っています。 定数などは、データシートのままです。 C1は0.1uにしています。 |
3rdIFAmp
周波数は、10.7Mhzです。
Bw=1Mhz、200Khz、20Khzの3種類のフィルタを用意しました。
このフィルタを作るにあたっては、JR1PWZ 清水さんのHPの記事をかなり参考にさせてもらいました。
http://homepage3.nifty.com/jr1pwz/index.html
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RBW1MHz |
RBW200KHz |
RBW20KHzで作ったつもりだったのですが特性を取り直したら10KHz強しかありませんでした?? |
3rdIF回路図です。 RBW20Khzの回路の中の半固定VRは要調整です。 安直ですが、最後のTrの前の10KのVRで最終的に画面の表示レベルを合わせています。 |
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内部の様子です。 ダイオードSWを使っている関係でシールドをしています。 これをしないと帯域外の減衰量が確保できませんでした。 75mm×90mmの大きさに作っています。 生基盤に空中配線で作っています。 なにせ不精なものでひとつしか作らないものですし回路の変更も自由自在なのでこの方式を採用しています。 |
3rdLO
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内部の様子です。 64.5MHz×2=129MHzを作っています。
スプリアスの様子です。 基本波をもう少し下げたいところですが、50dB下なのでよしとします。 水晶は、手持ちがあった64.5MHzを使っていますがこの周波数に限ったことではありません。 |
たとえば、ここが128MHzとすると2ndLOを872MHzにすればよいだけです。
後ほど、書きますが2ndLOはPLLの分周比を変えれば柔軟に対応できます。
2ndIF
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内部の様子です。 2ndIF部分だけでは、ほとんどゲインはありません。
アンプ部分の特性です。 TGレベルが-10dBですので3dBのゲインです。 |
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1G −10dBm 860M +10dBm を入力したときの出力の様子です。 左が0−1G 右が0−3Gです。 860MHzの2ndLOの漏れがあります。 結局この漏れが最終的にスプリアスとなって表示されてしまいます。 対策としては、2ndLOを1140MHzにすればと思っていますが、秋月の安いVCOではそこまで可変できないので思案中です。 (POS-1025があるにはあるのですが他のことに使いたいことがあるのです) |
2ndLO
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内部の様子です。 この部分は、両面基盤を使っています。 まずTC5082Pで10Mhzを1/256して39062.5Hzを取り出しVCOの出力(860Mhz)をPD6127Pで1/128してさらにTC9198Pで1/172して39062.5Hzを取り出しTC5081Pで位相比較してPLLをかけています。 3rdloとの関係で9198の分周比をかえれば対応できます。
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裏側の様子です。 切ったり貼ったりでぐちゃぐちゃです。 プリントパターンは最善ではありませんので掲載しません。
uPC2709は、サトー電気で入手しました。 データシートはこちらです。 http://www.ncsd.necel.com/microwave/japanese/ic/wide_j.html |
1GhzBPF
マキ電機の3セクションキャビティを使っています。
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BPFの周波数特性です。 きれいな特性ではありません。 最初の頃の、画像をみてもらえば判るのですが信号の20Mhz位下にスプリアスがあります。それを少しでも抑えるために1Ghzを通過特性の下限にもってきています。 キャビティの中の仕切板は使わず銅版で1/3の大きさのもの作っていれています。 又、調整棒とケースの間に3PFのチップコンを入れて共振周波数を下げています。 |
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最近ヤフオクで1Ghz付近の5素子のBPFを入手しました。
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高いところに、小さい山がありますが30Mhz下で上のBPFより20dB下がっているので使ってみたいと思います。
1stLO
1stLOには、ミニサーキットのPOS−2120Wを使っています。
この2120WはVCO制御電圧の中ほどで周波数/電圧が大きくなります。
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左図を見てもらえば判りますがリニアではありません。 その結果FullSpanの時中央付近で目盛と合わないことになります。 (最初の画像をみてもらえば判ります) この解決には鋸波を細工して
このような波形にするか、1stLOをPLL制御してPICなりを使って制御するかということになりますがわかって使う分には観測値を補正すればいいと割り切ってこのまま使っています。 コントロール電圧は、1.5〜15Vで1G~2Gを出力します。 (ミニサーキット データシートから) |
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Sweep回路
1stLOと、オシロのX軸を制御する鋸波を発生させます。
(この回路は、SPECTRUM 電子工作の中のSweep回路を参考にしています)
最初に10VP-Pの鋸波を発生させ、それをVCOを駆動するために必要な1.5V~15VP-Pに変換しATTで1/1,1/10,1/100,1/1000,1/10000
して100M/div,10M/div,1M/div,100K/div,10K/divになるようにしています。
(訂正 回路図が、一つ古い物が掲載されていました。掲載しなおしました)
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穴開き基盤2枚に作っています。 |
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裏側の様子です。 結構いい加減な作りです。 ここでは、貝原さんのプログラムの制約によりX軸の走査は2秒間以内に2回フルスイングするようにしています。 又、下の図のように鋸波の下りの部分を 使った方が表示確度が高かったのでこちらを使っています。 オシロを使って表示させる場合は上り、下りどちらを使われてもいいと思います。 |
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SweepTime 100msec |
SweepTime 200msec |
SweepTime 500msec |
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内部の様子です。 ガラエポ両面基盤にカッターでランドを 切り出して作りました。 UPC1677の、入出力を分けるようにシールドをしています。 |
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回路図とパターンです。 見にくくて申し訳ありません。 まず1200MhzLPF(1GhzのLPFだと1Ghzde−3dBになるのであえて1.2GhzのLPFにしました。) を通り1SV172のATTを通りRMS-30(ミニサーキットDBM)で1stLOとMIXして1Ghzのダイプレクサーを通ります。(ただ、このダイプレクサーはスペアナ+TGがないと調整はかなり困難ですので3dBのATTでもOKです)。 その後、uPC1677で増幅しています。 |
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1SV172によるATTの様子です。 なんとか使える範囲ではと思っています。 |
1SV172 ATT −10dB |
1SV172 ATT −20dB |
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液晶表示部
ここは、貝原さんのデジタルオシロのX-Y表示機能を使っています。
回路図はこちらです。 (詳しくはJK1XKP貝原さんのHPをご覧ください)
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液晶表示機の裏側に H8マイコン 冷陰極管インバータ DC-DCコンバータ をすべて付けています。 |
この中で、貝原さんのオリジナルでは、Y軸のSHIFT電圧がー5Vになっていますがこちらでは逆に下に振りたいので+1Vを入れています。
又、オリジナルではX軸入力制限用のツェナーDがRD5.1になっていますが貝原さんのアドバイスによりRD5.6に変えています。
(5.1では4.7Vあたりから電流が流れ始め4.8V以上に上がらないそうです。そのためX軸の端から端まで振れなくなるということです)
H8のプログラムは、貝原さんのHP上のXyscgren.MARをダウンロードされて書き込んでください。
ただ、ここで使っているシャープのLCDは今では入手困難です。表示部にはオシロを使うか別の方法を考える必要があります。
電源部
電源としては、+24V・+12V・+5V −12V・−5Vが必要です。容量的には+は1.0A、−は0.5Aあれば足ります。
(しかし、発熱の問題などを考慮するともう少し大ききして余裕を持たせたほうがいいと思います)
もしこのLCDが入手できればこの表示部回路のみは別電源で12Vの1.2A程度が必要です。(ここでは、秋月のスイッチングACアダプタ
12V 1.2Aを使いました。) 参考回路
別に、参考回路通りの必要はありません。要は上記電圧・電流容量があればOKです。
全体の結線図
高周波の通るところは、同軸ケーブルを使用してください。
写真でみていただくとセミリジットを使っていますが、手持ちがあったので使っていますが3D-2V程度(1.5D-2V)の同軸ケーブルで
問題なく働きます。
ながながと書いてきましたが、ページが重たくなってきましたので製作の勘所などは別ページを立ち上げて説明します。