トランス帰還のNFBアンプ(別名 ノイズレス・フィードバック増幅器)として有名な「NORTON AMP」があります。
トロイダルコアの活用百科の中の178P〜180Pに詳しく載っています。
以前この回路は「2SC1815」を使って実験したことがあります。
現在作っている8BANDのTRXのRFAMPとしても使用を検討しています。
今回この回路の低歪実験として、トロ活の中で紹介されている低歪回路の実験をしてみました。
この実験をしてみようと思ったのは、半年くらい前にWEBでいろいろ検索しているときに偶然見つけたHPに「LA8AK」のHPがありその中の
「LA7MI mixer expriment」の中に見慣れないNFBAMPの記事がありました。
早速実験してみたところ、1:4のトランスを使ってGain12db、1:3のトランスを使ってGain9dbで周波数特性やIPIP3等はNortonAmpとほとんど一緒でした。
その時は、トランスが2ついるし1個ですむNortonAmpのほうがいいなということで深くは追求しませんでした。
最近になってトロ活の改定新版をめくっていてNortonAmpの歪改善回路が加筆されていることに気が付き前に実験した上記の回路を思い出しなにか同じような
感じだなということで試してみようと思い立って実験してみました。
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歪改善回路の原理図です。 これは、Chris Traskが2001年に米国特許6172563を取得しているそうです。 歪の原因はTRのエミッタ部分の非直線性にあるので負帰還をかけて低歪化するのだ そうです。 |
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今回実験した回路です。 使用したTRはヤフオクで入手した規格不明の「0502−07」というものです。 T2に使用したコアはFDKのK14 TF1204というコアです。(詳細不明) 1:2の巻線比にしています。 ここのコアには、上記のLA7MIの記事中にある写真を参考にして穴の中に薄い真鍮板 (ダイソーで購入)を切って丸くまるめて突っ込んでいます。 よくリニアアンプに使われるメガネコアの中にパイプを通す方法です。 |
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実験基盤です。 |
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周波数特性です。 40MHz付近にピークが出来ています。 この歪改善回路を付加する前にはありませんでした。 帰還の位相が180度からずれてきているものと思われます。 ゲインは1:3:5の巻線比の計算とおり9dbです。 (TG Level=−10dbm) |
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7.00MHz+7.02MHz(0dbm)の2信号を入力したときの IM3の様子です。 ノイズに埋もれてよくわかりません。 IPIP3は+41dbm超ということになります。 |
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詳しくみたものです。 この状態でもノイズに埋もれていますのでよくは判りませんが IPIP3は+46dbmは確実にあるのではと思われます。 この時の、電源電圧は15Vコレクタ電流は39mAでした。 このコレクタ電圧が1mAずれてもIM3は5dbくらい悪化します。 (それでもIPIP3は+40dbm超というこには変りありませんが) |
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いい事ばかりではありませんで、周波数を変えると極端に IM3が悪化します。 左図は、同じ条件で21MHzに周波数を変えてみたときです。 |
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バイアス点を調整して最良の状態にしたときです。 Vc=15V Ic=46mA IPIP3=36dbmといったところです。 広い周波数範囲でIPIP3=+40dbm超が実現出来れば 最高ですが、まだどこをどうすればいいのか闇の中です。 |
2008.06.22
リターンロスブリッジを使って入力の整合状態をみてみました。
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まずこれは、歪改善回路を付けないときのものです。 10M−60MくらいまでVSWRが1.2以内くらいです。 |
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歪改善回路を入れた場合です。 15M以上でかなり悪化していますがこれを見るかぎりでは 21M付近ではVSWRは1.4くらいです。 この入力VSWRの悪化と上記の周波数特性で40M付近に ピークがあるのでNFBの位相のずれがIM3の悪化のもとでは と思っています。 |
入力のVSWRの悪化の原因は、歪改善回路に使っているコアの影響ではと考えてコアをいろいろ変えてみました。
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いろいろ変えてみましたが、フェライト系のコアはダメで カーボニル鉄系のコアがいいようだということになりました。 あるコアを変えてみたところ入力VSWRが改善されました。 |
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左側が最初に使ったコアです。 フェライト系のメガネコアです。 「LA7MI mixer expriment」の記事中にある写真では メガネコアではないですが穴の中に同軸ケーブルの網線を 入れてその中に2次線を入れて巻いていたのを見てそういう 感じで作ってみたものです。 低い周波数のシングルBANDだけでみればすばらしい結果が 出ましたがHF〜VHFまでのオールバンドで考えるとダメです。 右側がいい結果が出たコアです。 JUNKで入手したものなので詳細不明ですがT−37−6に 似た性質のものではないかと思われます。 巻線もバイファイラとかいった巻き方ではなく、普通に1次側 1t、2次側 2t巻いたものです。 |
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今回実験したメインのコアです。 左から、全体的に一番いい成績だったメガネコア 2番目は、FB−801−43を4個使ったもの 3番目は上でも使っているメガネコアを3個使ったもの 4番目は、43材で出来たメガネコア 28MHzまででしたら2番目と4番目がいいのですが50Mでは 厳しいようです。 1番目のコアは、低い周波数では2番目、4番目には若干劣り ますが50Mまでしっかり使えます。 (コアの中の巻き線長が影響してくるものと思われます) ということで1番目のコアを使ったトランスを使っています。 巻線比は、1:3:5にしたかったのですがIPIP3を全BANDで 良くするために1:3:4にしておのおの2倍の2:6:8巻いて います。 |
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0−100MHzの周波数特性です。 0−50MHzの間は平坦な特性になっています。 (TG Level=−10dbm) |
各BANDのIPIP3です。
BAND |
IM3 |
IPIP3 |
3.5M |
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+40dbm |
7M |
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+39dbm |
14M |
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+39dbm |
18M |
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+40dbm |
21M |
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+40dbm |
24M |
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+40dbm |
28M |
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+39dbm |
50M |
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+35dbm |
50Mだけ少し悪い値です。現段階では、原因はどこなのか不明です。
2008.06.26
歪改善回路の改善度
実際この改善回路を付加した場合どの程度の改善になるかということですが
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実験中の様子です。 トランスには、3番目のものを使い巻線比は1:3:5にしました。 歪改善回路のNFBトランスにはカーボニル系を使い1:2にし ました。 TRは「NEC 0502−07」シングル 電源電圧は18Vです。 周波数は3.5MHzです。 3.50M+3.52M 2信号 0dbm |
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まずは、改善回路を付加した場合の最良の特性です。 Ic=45mA |
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歪改善回路をはずしたときの特性。 これをみるとあきらかに改善されています。 |
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これは、はずした状態でバイアスを調整してIM3が最良になる ように調整したときです。 Ic=100mA 左IM3 右IM3 IC 付加あり −75.2 −65.4 45 付加なし −67.4 −61.2 100 あきらかに改善されていることが判ります。 |
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トランスを、FB−801−43を2個使ったものに変更 改善回路付加なし。 IC=39mA |
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改善回路付加 若干よくなったかなという程度です。 |
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バイアスを調整して最良点にした場合です。 左IM3 右IM3 IC 付加あり −78.5 −78.5 27 付加なし −76.6 −76.5 39 付加回路を付けた時の方が少ないICで最良点があります。 省エネの観点からも地球にやさしいです。(笑) 元々IM3が良好なものに付加しても若干の改善しかないよう です。 |
上記の7MHzにおける、IPIP3=46dbmはチャンピオンデータの様相です。単BANDでとことん追求すれば可能です。
これを多BANDで同じようなデータをそろえようとすると無理がありそうです。
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2SC1815(シングル)を使って改善度を確認しておきます。 Vc=12V Ic=39mA IPIP3=+30dbm といったところです。 |
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改善回路を付加した場合です。 IM3で約4dbm改善があります。 |
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2SC1815を使った場合の最良値です。 Vc=18V Ic=39mA IPIP3=約+34dbm |
ある程度は、歪が改善出来ることは確認できましたが原典にあるようにIPIP3が7dbmも改善出来ませんでした。
使うコアとか回路に検討する項目がありそうです。
あと単純にパラ接続したものに付加してみましたがIM3はほとんど変りませんでした。
原典にあるように、同じものを2個作って並列運転するかプシュプルにすればいいようですが今後の課題です。
いろいろ実験を続けてきましたが、最初の7MHzのIPIP3=+46dbmが強烈だったのでこれはいいと思ったのですがしりすぼみの結果になりました。
しかしある程度はIM3が良くなるのは確かです。
この結果を元に、現在作っている8BANDのTRXのTOPAMPとして「謎のTR NEC0502−07」をシングルで使ったもので各BANDのIPIP3を+39dbm以上
を目標にして製作を進めたいと思います。