仙波さんから、頒布してもらった水晶がまだほとんど手付かずに残っています。
そこでその中から45.158Mhzの水晶でラダーフィルタを組んで5Mhz付近のLoと組み合わせて
50MhzのSSBトランシーバーを作ってみたいと思います。
構想としては、
送受信範囲50.15M〜50.25Mの100Khz幅
送信出力1W
ということにします。
Loも頒布してもらった水晶を組み合わせて作ってみることにします。
いろいろ検討した結果
21.477Mhzと16.3536Mhzの水晶をMixしてLoを作ることにしました。
その方法として、JA9TTT/1加藤さんがHPに発表されている「The Wide Range VXO Circuit」を利用させてもらうことにします。
フィルタには、45.158MHzの水晶を使った8素子のラダーフィルタを使います。
IF回路
今回IF回路は、2SC1855を使ったフォワードAGC回路を使おうと思います。
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1段の場合の特性です。 ゲインは、約30dbです。 AGC電圧2.5V〜6Vでほぼリニアな 特性になっています。 |
フィルタの損失が約10dbあるので、2段では不足ですので3段増幅することにします。
3段の回路図です。(クリックで拡大します)
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3段増幅のAGC電圧―利得特性です。 測定サンプルが少ないので角々していますが1段のときとほぼ同じ 格好です。 2.5V〜4V(その上まで?)ほぼリニアです。 4V以上はスペアナのノイズレベル以下になり測定できませんでした。 2段目と3段目の間にはノイズカット用に2段のフィルタを入れてあります。 (6db帯域幅約6Khz) |
フィルタを付けた総合特性が次図です。
AGC電圧=2V |
AGC電圧=2.5V |
AGC電圧=3V |
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最初にAGC電圧=2Vの時に最良になるように調整しています。
上の3枚は、フィルタとIFAMPの間に3dbのATTを入れたものです。
下の3枚は何も入れないときです。
AGC電圧を変化させるとIFAMPの入力インピーダンスが変化してマッチングがずれるようです。
3dbのATTをいれることで少しは改善されますが許容範囲かとも思います。
段間に入れたフィルタの影響でフィルタ単独のときに比べると特性が良くなっています。
-6db帯域幅2.72Khz、-60db帯域幅4.72Khz シェイプファクタ1.73という事になりました。
フィルタも含めたIF部のゲインは約80dbということになります。
AGC回路
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5MHzLo
冒頭でも書きましたが、JA9TTT/1加藤さんのHPにある「The Wide Range VXO Circuit」を利用させてもらうことにします。
(この回路の詳しい内容はJA9TTT/1加藤さんのHPを御覧くださいhttp://ja9ttt.homedns.org/index.html ) 残念ながら閉鎖されました。
まず回路図です。
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原典では、バッファはありませんでしたが付けています。 バリコンはジャンクで入手してあった容量不明のバリコンを 使っています。 格好から、おそらくAM−FMラジオ用のバリコンだろうと思います。 5セクションありますが、容量の大きいほうを1セクションだけ使って います。 16.354Mhzの水晶を固定にして 21.477Mhzの水晶を可変しています。 可変範囲は、5.012Mhz〜5.132Mhzまでで120Khzの 範囲です。 50.17Mhz〜50.29Mhzの範囲が送受信可能周波数に なります。 |
ご注意 この回路は、多大なスプリアスを発生させます。後の処理で必要な信号だけをきちんと取り出してください。 又、ご使用される水晶によっては目的信号のすぐそばにスプリアスが発生する場合があります。この場合はフィルタ等で取り除く事は困難です。 この実験と同じ周波数の水晶を使われてもメーカーが違えば出てくるスプリアスも違ってきます。 くれぐれも、スプリアスにはご注意ください。 |
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2SC945のエミッタ部分のスペクトラムです。 すさまじいスペクトラムです。 (スペアナの入力に10dbのATTを入れています) マーカーが目的周波数です。 |
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バッファ1段と同調回路1段通した後 2SK241の出力同調回路の2次側のスペクトラムです。 少しは見れるようになりました。 |
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バンドパスフィルタを通した後です。 |
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NFBAMPで1段増幅し 最後に1段のLPFを入れた後です。 スプリアスは消えてきれいなスペクトラムになりました。 これだと十分実用に耐えれると思います。 |
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もう少し範囲を広げてみました。 高い周波数までなにもありません。 |
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5Mhzスパンのスプリアスです。 |
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500Khzスパン |
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50Khzスパン 近傍のスプリアスもすべて-60db以下です。 |
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出来上がったLo部分です。
水晶は、ホットボンドで固定しています。 |
SBM
変調には、SBMを使うことにします。
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SBMの回路です。 (参考文献:トロイダル・コア活用百科)
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LO→RFOUTへのアイソレーションです。 (スペアナの入力に10dbmのATTを入れています。) 50Mhzで、約-48dbmのアイソレーションがあります。 これから見ると、低い周波数(10Mhz位)で一番アイソレーションが良いようで-60dbm 以上あります。 10.7Mhzあたりでも十分使いものになりそうです。 DBMに比べて構成素子が少ないので手軽に作れます。 |
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左側は、SBMの直後のLOの漏れです。 (スペアナの入力に10dbのATT) 右側は、クリスタルフィルタを通した後です。 |
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800Hzと2000Hzの2トーンを入れた様子です。 SBMでも十分使い物になります。 |
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ここまでで出来た部分を繋いでみました。 |
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左側は、0−100Mhzのスプリアスの様子です。 IFが5MHzしか離れていないのでどうかと思いましたが目的波の30db下なのでBPFでなんとか取り除けると思います。 |
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2ポールのBPFを組んでみました。 45Mhzでー30dbm(Peakから)なので なんとかいけるかもです。 挿入損失は、-10dbmです。 |
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BPFを通した後です。 (スペアナ入力の10dbATTは、はずしています) 40Mhzのスプリアスが少し見えていますが この後の回路で取り除けるのではと思っています。 |
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ここまでを、1枚の基盤に纏めました。 出力は、約0dbmあります。 回路図です。 |
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2ポールのBPFの特性です。 少し定数を変更しました。 Lを3tから5tに増やし 並列Cを68Pから39Pにしました。 挿入損失は、約3.5dbです。 -6db帯域幅は3Mhz |
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近傍のスプリアスの様子です。 少しありますが、すべて-60db以下ですので よしとします。 |
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少し広い範囲のスプリアスの様子です。 低いほうに5Mhzおきに2つありますが 上記のBPFを1段入れると問題なくなると 思います。 正確には、5Mhzより少し低いところにあるので 上のスペクトラムには現れていません。 |
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0−200Mhzのスプリアスの様子です。 高いほうにはありません。 |
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BPFを3ポールに変更です。 挿入損失は約3db増えました。 5Mhz離れでは、 上側が-15db 下側が−13db減衰量が増加しています。 |
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上のBPFを通した後です。 なんとか、ぎりぎり-60dbクリアです。 |
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PowerAmp
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左側が、2SC1971を使った1Wのリニアアンプ 右側が、2SC3778を使ったNFBアンプです。 回路は、どちらもトロ活の中にある回路を使いました。 大きさは、リニアが50×40×30です。 3mm厚、アルミコの字型アングルに組みました。 NFBアンプは40×25です。 いずれもコアには、秋月のフェライトコアを使って います。 |
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TRを2SC5337に変えました。 NFBアンプに、6dbmの信号を入力したときです。 ゲインは10dbm、3rdIMDは60db下です。 IP3は約33dbmです。 この時の、出力は16dbmです。 2SC5337は、安価なわりにはいい値が簡単にでます。 さすが、高周波低ひずみ増幅用とうたっているだけあります。 |
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リニアアンプの入出力特性です。 1dbコンプレッションレベルは33dbmです。 2SC5337−2SC1971の構成です。 2段でのゲインは約30dbあります。 2SC1971単体では、約20dbのゲインです。 |
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1W出力時のIMDの様子です。(Vc=13.5V) 2信号は、手持ちの出力の関係で51MHzを使っています。 Vc=18Vにすると2Wまで出ます。 アイドリング電流は30mA流しています。 1W出力時のICは約160mAで、効率は約50%です。 |
パワーアンプに使った、2SC1971は現在では入手が非常に困難です。
同じように使えるのは、2SC2237が使えるのではと思いますが手持ちがありませんので試していません。
その他には、少し容量の小さい石をパラ・プッシュで使う方法もあると思います。
その後、2SC2538・2SC3950等を入手して実験してみました。
最終的には、2SC2538PPをVC=18Vで使っています。
ほぼ出来てきたので、ケースに入れてみました。
ケースは、昔使ったものの再利用です。あちこちに穴があるので隠すのに大変です。
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パネル面の様子です。 メーターの後ろの黒い板は昔の穴を隠すためのものです。 |
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内部です。 手前がVXO バックパネルに付いているのが、1Wリニアアンプです。 1Wリニアアンプ+LPF 放熱板は2mm厚のアルミのコの字チャンネルをつかいました。 こちらも使いまわしなので変なところに切り込みがあります。 実装時には、アルミのパンチングシートでシールドしています。 |
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基盤は2段重ねにしています。 上の基盤には、BM・XF・送信MIX・アンプ+BPFなどです。 下の基盤には、受信プリアンプ・受信MIX・ポストアンプ・IF 送信エキサイタがついています。 |
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電源は、リサイクルショップで24V・1.8AのACアダプタ(中はスイッチング電源)を買ってきて使うことにしました。
(1W出力時で0.6Aの消費電力なので少し大きすぎるのですが他に適当な物が無いので使っています)
各部波形
送信部
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1W出力時IMD 2tone
1000Hz,1600Hz どういうわけか、3次IMDが低いので5次で測っています。 (VC=18V、IC=200mA) |
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1−200MHzのスプリアスです。 デルタマーカが少しずれていますが、2次高調波は-60db です。 45Mhzも、-65db以下です。 (20dBのカップラを通しています) |
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近傍のスプリアスもすべて−60db以下です。 |
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さらに近い範囲です。 |
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無入力時のキャリアの漏れです。 (20dbのカップラが入っています) −52.6dbm キャリアサプレッション約−60dbということになります。 |
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鎮魂 今回採用にならなかった実験基盤です。 今後使えそうな物もありますので、そのうち活用出来ればと 思います。 TR類のご昇天はありませんでした。 |
参考文献 「トロイダル・コア活用百科」 山村 英穂著 CQ出版社
JA9TTT/1 加藤さんのHP 「The Wide
Range VXO Circuit」